高度に結びついた機器を落雷から保護する為に参考にすべき基本情報を集め、まとめた私の見解です。
太陽光発電設備に設置するSPDの規格(試験方法と選定及び適用)は2020年2月に公布されたJIS C 5381-31及びJIS C 5381-32で説明されています。運用基準では公共建築工事標準仕様書(平成31年版)に接続箱に設置するSPDについてのみ仕様が示されています。
公共建築工事標準仕様書(平成31年版):
接続箱に設置するSPDについて仕様が示されています。「低圧電源用SPDの規格JIS C 5381-11に基づきクラスⅡ試験を行ったSPDで、SPD表面に正常な状態であるか故障しているを判別できる表示を持っており、特記がなければ、上記(下に示す)の表で示される性能」を有する製品としています。電源系統はDC600Vとしており、電源系統がこれより高い電圧の場合の仕様は示されていません。
建築設備設計基準(令和元年版):
接続箱を含め太陽光発電設備に設置するSPDについて性能は示されておりません。
日本の規格:
太陽発電設備の保護用SPDの規格としてJIS C 5381-31及び JIS C 5381-32が2020年2月に公布されました。いずれも低圧サージ防護デバイスの電源用SPD, 通信用SPDに続く一連の規格です。
JIS C 5381-31:試験方法を示した規格で表題「太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの要求性能及び試験方法」
JIS C 5381-32:選定と適用基準を示した規格で表題「太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準」
海外の規格:
太陽光発電設備用SPDに関する国際規格はIEC 61643-31 及び IEC 61643-32があり、これを基にして上記のJISが作成されました。
JIS C 5381-31はIEC 61643-31の技術的内容及び構成を変更することなく作成され、一方、JIS C 5381-32はIEC 61643-32を基に、技術的内容を変更して作成したとそれぞれ序文に記述があります。
JIS C 5381-31 (太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの要求性能及び試験方法)
IEC 61643-31をベースとする太陽電池設備用SPDの規格が、2020年2月に公示されました。IECの規格ではDC1,500Vまでが適用範囲となっていますが、日本の電気設備に関する基準では直流750V以下、交流600V以下を低圧と規定しております。
この規格では“SPDの定格短絡電流 Iscpv(Short-circuit current rating of the SPD)”という新たな特性値が提示されていますが、これはJIS C 5381-11で示されているIsccr(Short Circuit-current rating)の名称を変更したもので、外部分離器とSPDで構成されるSPD保護システムが遮断できる最大推定短絡電流値を示します。
試験の内容は低圧電源用SPDの規格 JIS C 5381-11と重なる部分が多くあります。
主な試験項目とその方法:
・動作責務:低圧電源用SPD( AC回路用) JIS C 5381-11と同様
・追加の動作責務:低圧電源用SPD( AC回路用) JIS C 5381-11と同様
・熱安定性試験:低圧電源用SPD( AC回路用) JIS C 5381-11と同様
・故障モード:“開回路故障モード(OCFM: Open-circuit failure mode)”と“短絡故障モード(SCFM: Short-circuit failure mode)”から故障時の
モードを宣言して試験を行います。
故障モードの試験:
太陽光発電設備の電圧・電流特性を模した電源又は電圧・電流特性が直線の電源を準備します。開回路故障モード(OCFM: Open-circuit failure mode)を宣言するSPDは上記のどちらかの電源を選んで行います。短絡故障モード(SCFM: Short-circuit failure mode)を宣言した場合は太陽光発電設備の電圧・電流特性を模した電源で試験を行います。
多くの太陽光発電設備用SPDはY型接続(バリスタが配電線側に2個、接地側に1個をY型に接続)で構成されており、故障モード試験では配電線側の1個のバリスタを銅バーに置き換えて試験を行います。
開回路故障モード(OCFM)の場合:
太陽光発電設備の電圧・電流特性を模した電源、又は電圧・電流特性が直線の電源:
Iscpvの2.7倍の試験電流を印加し60秒以内、10A (Iscpvが10Aより大きな場合のみ)を印加した場合には20分以内
直線特性を持つ電源の場合にはさらに:
Iscpvに等しい電流の場合には5分以内
何方の故障モードにおいても、SPD自体に発煙や損傷なく、また試験設備に発火等なく各条件に応じた時間内ににSPD内部分離器が動作し回路を安全に遮断する事を確認します。
本Web サイトで示すものは、落雷による機器の破壊を避ける為、機器保護の方法について私的な見解をまとめたものです。内容については最善をつくしましたが、考え違いや見落としがあった場合はご容赦下さい。
また本説明に基づき保護対策を行い、機器及びそれに関連する被害が発生した場合でも、一切の責任を負いませんので、雷保護対策は自己責任で設計し施工してください。