高度に結びついた機器を落雷から保護する為に参考にすべき基本情報を集め、まとめた私の見解です。
Home /内部雷保護 /SPDの協調SPDの協調とは一続きの回路に、2台以上のSPDが繋がっている場合に、雷サージを複数のSPDで分散して処理する事です。直撃雷が侵入した時、SPDの協調が確保できていない設備では、特定のSPDに過度のストレスが加わりSPDが破損したり、火災などの二次被害が発生する可能性があります。
・協調を検討すべき設備
・SPDを取り付けてある複数の盤が、近接されて設置されている設備
・無線基地局の様に受電と機器への給電回路が一体となっている盤
直撃雷の想定される侵入経路の入り口側に雷サージ処理能力の高い製品を、機器に近い側に電圧防護レベルが優れている製品を取り付け、雷電流ストレスを分散して機器を保護します。
協調が不十分な場合には機器に近くに設置されたSPDが、大半のサージを処理する事になり、破損するの危険性が高くなります。
設置するSPDの特性を正確に把握出来れていれば、異なったメーカの製品同志でも協調を取る事が出来ますが、一般に詳細な特性データを入手するには時間が掛かり、確実に協調が取れるか判断する事が難しい為SPDの協調を釣る場合には同じメーカの製品を選定する事を薦めます。
・電源用SPDと通信用SPDの協調
技術的な観点からは,電源用SPDと通信用SPDの協調を考える必要はありません。電源線と通信線は異なる系統であり、それぞれのSPDの性能が他の系にあるSPDに影響を与えることはありません。異なる通信設備に設置するSPDとの協調を考慮する必要はありません。
施設の管理の視点からは、少なくとも電源用または通信用はそれぞれ同一メ-カの製品である方が、点検が簡便であると考えられます。
無線基地局や比較的小規模の建物において、受電設備と分電・動力盤が近接して設置される状況のクラスⅠとクラスⅡSPDの協調を考えます。
直撃雷の侵入経路の入り口側にクラスⅠSPDを、保護対象機器に近い側に協調の取れたクラスⅡSPDを設置し、雷電流の大半をクラスⅠSPDが処理し、クラスⅡSPDは電圧を抑えることを主目的にします。
いずれの場合も、雷電流をクラスⅠSPDが適切に処理できない場合は、クラスⅡSPDに過大な雷サージ電流が流れ込みバリスタの劣化が進みます。
またクラスⅡSPDの処理能力以上の雷サージが流れ込んだ場合には破損する可能性もありますので、選定にあたっては最大放電電流値にも注意を払う事が必要です。
一般にGapSPDは、バリスタSPDよりも電流の処理能力が高く、比較的大きな直撃雷の侵入が想定される場所への設置に適していますが、バリスタとの協調を取るには注意が必要です。 GapSPDは端子間の電位差が、製品ごと特定の電圧に達するまでは放電せずバイパス動作を行いません。一方バリスタは電圧が加わると、直ちに電流をバイパスし始め、電圧の上昇に伴いバイパス電流は加速度的に増加します。バリスタはGapに先行してバイパス電流を流し始める為、バリスタが処理できる最大電流値に達する前に、Gapが放電を開始する必要があります。Gapの放電開始が遅れると、電気機器の近傍に設置したバリスタSPD破損する危険性が生じます。
Gap SPD(SPD1)がSPD2の最大放電電流(Imax 2)以下の電圧で放電を開始すれば、協調が達成できます。GapSPDが動作するまでに、先行してバリスタ(SPD2)が雷電流をバイパスしており、Umax2以下の電圧で放電を開始するSPDを選定します。実回路ではSPD1とSPD2と間には配線インダクタンスがありさらにインダクタンス素子を直列に接続すれば、両インダクタンスによる電圧降下によりSPD2の負担を軽減する事が出来ます。
上図SPD1がSPD2よりも早く動作する製品を選定する事により協調を採る事が出来ます。Up1とUp2は最大L・dlpeak/dtの電位差があり、SPD1とSPD2が同じ特性曲線を持っている場合は、SPD1が常に早く動作を始め、協調を取る事が出来ます。
電圧防護レベルやバリスタ電圧で判断する手法も考えられますが、確実な方法ではありません。電圧防護レベルやバリスタ電圧など特定の条件で協調がとれているか判断するのではなく、製品が処理できる電流範囲で、協調を確かめる必要があり特性曲線を見て判断ます。
・侵入が想定される最大電流値以下の範囲で、SPD1と
SPD2の特性曲線が 交差しない事
・SPD1の特性曲線が”常に”SPD2の特性曲線の下方にある事を確認する必要があります。
雷電流の侵入経路の初段にあるSPD1の特性曲線は、全領域に於いて機器に近い箇所に設置されたSPD2よりも、下方に位置している事が必要です。 同じ電圧レベルにおけるSPD1とSPD2の動作点(黄色●と緑色●)が離れており、常にSPD1が大きな雷電流を処理しており協調が確保できています。赤色はSPD2が処理できる最大雷電流値で、協調が取れるのはこの点までとなります。 上図において電圧1、電圧2の状態を比較すると、電圧2の状態は、SPD1とSPD2が処理する電流に差があり、電圧1の時よりも余裕ある状態で協調が取れています。
前段のSPD1(Gap素子)の放電開始電圧が、後段のSPD2(バリスタ素子)の最大放電電流の開始電圧より高い場合には、SPD2が雷電流を処理できず破損する可能性が高くなります。
前段SPD1とSPD2の特性曲線が交差している場合には、交差後の領域ではSPD2がより多く雷電流を処理することになりSPD2が破損する可能性があります。バリスタ電圧(1mA流す為の電圧, U1ref, U2ref)はバリスタ素子の特性を見る一つの要素ですが、SPDの協調を検討する時には特性曲線全体を知る必要があります。
本Web サイトで示すものは、落雷による機器の破壊を避ける為、機器保護の方法について私的な見解をまとめたものです。内容については最善をつくしましたが、考え違いや見落としがあった場合はご容赦下さい。
また本説明に基づき保護対策を行い、機器及びそれに関連する被害が発生した場合でも、一切の責任を負いませんので、雷保護対策は自己責任で設計し施工してください。